「やってみて初めて〝ああ、これは意味なかったな〟って分かるんだから」
賽助さんの『君と夏が、鉄塔の上』を読みましたので、私の感じた魅力をご紹介します。
【書籍情報】
題名 :君と夏が、鉄塔の上
著者 :賽助
出版 :ディスカヴァー・トゥエンティワン
発売日:2023/6/23
本の長さ:258ページ(Kindle換算)
おすすめ度:★★★☆☆
読みやすさ:★★★☆☆
読了:2024/05/13
媒体:PrimeReading
※PrimeReadingは月に数十冊の入れ替わりがあるので、タイミングにより閲覧できない場合があります。最新情報は公式HPをご確認ください。
この記事の目次
本書との出会い:爽やかそうな作品をPrimeReadingで探してみた
最近読んだ2冊の小説が、非常に切なく、心に刺さる内容でした。
「ちょっと軽めの小説でも無いかな~」とPrimeReadingで見つけたのが、『君と夏が、鉄塔の上』になります。
あらすじ
鉄塔の上に、男の子が座ってる――
鉄塔マニアの地味な伊達(だて)は中学3年生の夏休みをダラダラすごしていた。
しかし登校日の学校で、破天荒な同級生、帆月蒼唯(ほづきあおい)から「鉄塔のうえに男の子が座っている」と声をかけられる。
次の日から幽霊が見えると噂される比奈山(ひなやま)も巻き込み、鉄塔の上に座るという男の子の謎を解き明かそうとするのだが――。爽やかに描かれるひと夏の青春鉄塔小説!!
Amazon商品ページより
私が感じた『君と夏が、鉄塔の上』の魅力
ファンタジー✕マニアック
本作を読み始めた段階では、「ん?鉄塔ってどういうこと?」と、頭の中は疑問符でいっぱいでした。
物語の本筋とはぜんぜん関係無いのですが、実は鉄塔には色々な種類があったり、電車と同じように線に名前があったりと、初めて知ったことばかりでした。
このとんでもなくマニアックな「鉄塔」というモチーフと、ヒロインの女の子にだけ見える「鉄塔のうえに座る男の子」を中心としたファンタジックな要素が、うまく調和していて、独特な世界観を創り出しています。
ただし、あまりにマニアックなので「料理長型女鉄塔ってどんな形!?」など、イメージを膨らますためには、画像検索をしつつ読み進めると良いかもしれません(笑)
懐かしい「夏休み」
最初は地味で平凡な毎日を送ってた主人公が、ヒロインや友人と不思議な体験をするストーリーは、「夏休み」という期限があるからこそ、さらに特別な瞬間に感じられます。
うだるような夏の暑さ、水筒の麦茶、カナカナとひぐらしが鳴く夕暮れ……。
40代の私にとっては、遠い過去の懐かしい「夏」を感じる描写ばかりで、「夏になったら、絶対、もう一回読もう!」と思わせてくれる作品でした。
中盤移行の疾走感
序盤は、状況の説明や、登場人物の紹介など、やや単調な印象を受けました。
しかし中盤移行、破天荒なヒロインの「行動の理由」や、鉄塔にすわる男の子の「正体」が明らかになるにつれ、一気にストーリーが加速していきます。
私自身、前半を読み進めるのはちょこちょこと2日ほどかかりましたが、後半は途中でやめられず、一気に1時間くらいで読み切ってしまいました。
若干、読む人を選ぶかも……?
モチーフのマニアックさや、それゆえの序盤の単調さなど、乗り越えるハードルがあるのがちょっと懸念。
あと、ちょっと風呂敷を広げすぎたのか、「あれ何だったんだろう?」と思うところもあり、「もしかしたら続編とかあるのかな?」と変に勘ぐってしまいました。