「源氏も平家も、正直に言えば私はどうだっていい。」
白蔵盈太さんの『義経じゃないほうの源平合戦』を読みましたので、私の感じた魅力をネタバレ無しでご紹介します。
【書籍情報】
題名 :義経じゃないほうの源平合戦
著者 :白蔵盈太
イラスト:龍神貴之
出版 :文芸社文庫
発売日:2022/12/5
本の長さ:250ページ(Kindle換算)
おすすめ度:★★★★☆
読みやすさ:★★★★☆
読了:2024/04/23
媒体:PrimeReading
※PrimeReadingは月に数十冊の入れ替わりがあるので、タイミングにより閲覧できない場合があります。最新情報は公式HPをご確認ください。
この記事の目次
本書との出会い:タイトル✕表紙に一目惚れ
「なんか面白そうな小説とか無いかな~」と思った私は、PrimeReadingの管理画面から[探す]→[ジャンルを選ぶ]→[小説・評論]と絞り込みしてみました。
そこで目に入ってきたのが、「義経じゃないほうの~」という文字。「なんだコレ?」と思って商品ページにアクセスし、表紙をじっくり見てみると……
「めっちゃ汗かいてる!明らかに『えぇ~(苦)』みたいな顔だし!」とクスっとしてしまい一目惚れ。
即、読んでみることにしました。
あらすじ
鎌倉なんか、来るんじゃなかった。蒲御厨で静かに暮らしていた範頼は、命の危機を感じて頼朝のもとへ来るも、会って早々、兄の怒りに触れ言葉も出ない。ちくしょう、怖すぎるだろ、この兄さま。打倒平家に燃え勇猛果敢に切り込んでいく弟の義経を横目に、兄への報告を怠らず、兵糧を気にする自分の、なんと情けないことか。頼朝と義経、二人の天才に挟まれた平凡な男、源範頼の生きる道。
Amazon商品ページより
私が感じた『義経じゃないほうの源平合戦』の魅力
主人公の悩みと愚痴にめちゃくちゃ共感
本作の主人公、「源範頼(みなもと の のりより)」は、兄の「源頼朝」と弟の「源義経」という二人の天才に挟まれています。
物語の舞台は、頼朝が関東での権力を手中に収め、いよいよ平家との戦いに本腰をいれる、という状況下なので、頼朝はまさしく「権力者」。義経も、早々に陣営に参加して頭角をあらわし始め、頼朝にも堂々と自分の意見を言える関係性を構築済。
そこに放り込まれた普通の男・範頼は、「頼朝兄さま、怖ぇ……」「義経は頼朝兄さまが怖くないの!?なんで!?」と右往左往(笑)
天才たちと凡人の自分の落差に悩んだり、口に出す勇気が無くて心のなかで愚痴ったり、ページの端々から感じる「人間臭さ」にとにかく共感。
つい、微笑みながら読み進めてしまいました。
映像が浮かぶくらい魅力的なキャラクターたち
兄の頼朝、主人公の範頼(のりより)、弟の義経といった主要なキャラクターはもちろん、脇を固める頼朝陣営の御家人たちも魅力的。
基本的に、「こんなことがあった→それについて私はこう思った」という範頼の一人称で物語は進むのですが、会話からだけでも、「あぁ、この人はきっとこんな感じの人なんだろうな~」と映像が見えそうなくらい分かりやすいキャラクターばかりでした。
特に、苦労人の範頼を支えてくれたとあるキャラクターは、読んだ人だれもが好きになるんじゃないですかね?
あまりにドンピシャすぎて、中盤、ちょっと泣きそうになりました。
笑えるだけじゃない読み応えのあるストーリー
苦悩人エピソードにクスッと笑えるだけでなく、範頼(のりより)が「平凡な自分になにができるのか?」を考え、少しずつ自分なりの”答え”を見つけていく姿は読み応えがありました。
著者さまのあとがきによると、史実をもとに創作や脚色したシーンもあるとのことですが、そんなことが気にならない(というか気づかない)くらい、満足感のあるストーリーでした。
「そこで生きる人の感情の動き」を納得感をもって読ませることができるのは、丁寧な心理描写のおかげなのだと思います。
著者さまの他の作品も読んでみたい
魅力的なキャラクターとテンポの良いストーリー展開でものすごく読みやすいので、「普段、あんまり歴史小説読まないんだけど……」という方にも、自信をもっておすすめできる作品です。
私自身、「著者さまの他の作品も読んでみたい!」と感じて調べてみたところ、『義経じゃないほうの源平合戦』に加えて、『あの日、松の廊下で』という作品もPrimeReadingで読むことができると分かったので、さっそくKindleにダウンロードしました。
さっそく読み進めたいと思います。