「すべてのビジネスパーソンや投資家には、企業の財務報告書を理解することが求められている」
総監修・かぶ1000さん、漫画・ひげ羽扇さん、編集・ループスプロダクションの『マンガでわかるベンジャミン・グレアムの投資術』を読みましたので、私の感じたポイントをご紹介します。
【書籍情報】
題名 :マンガでわかるベンジャミン・グレアムの投資術
総監修:かぶ1000
漫画 :ひげ羽扇
編集 :ループスプロダクション
出版 :Standards
発売日:2022/9/22
本の長さ:176ページ
おすすめ度:★★★☆☆
読みやすさ:★★★☆☆
読了:2024/05/06
媒体:PrimeReading
※PrimeReadingは月に数十冊の入れ替わりがあるので、タイミングにより閲覧できない場合があります。最新情報は公式HPをご確認ください。
この記事の目次
本書との出会い:マンガでわかる〇〇の投資術シリーズ読書中
PrimeReadingにて、『マンガでわかる〇〇の投資術』シリーズが計4冊、読み放題に登録されており、「金融リテラシー(より良い生活を送るために必要なお金に関する知識や判断力)」をつけるために順番に読書中です。
すでに同シリーズの3冊を読了。
今回は、シリーズ第5弾のベンジャミン・グレアムです。
(実はシリーズ第4弾としてジョージ・ソロスの本もあるのですが、これだけPrimeReading対象外でして……。将来、Kindleultimatedを使うときには読んでみようと思っています)
あらすじ
世界最高の投資家ウォーレン・バフェットが師事し、4億円トレーダー・かぶ1000 氏も実践して結果を出すなど。
当代の投資家たちが使い、現代にも通用する「バリュー投資」を投資家ベンジャミン・グレアムの人生からその投資哲学と手法をマンガで知る!Amazon商品ページより
私が感じた『マンガでわかるベンジャミン・グレアムの投資術』のポイント
定量分析にこだわる
グレアムの投資術は、株価の増減トレンドやダウなどの株価指数を用いるのではなく、あらゆる財務情報を集め、分析し、割安な銘柄に投資することで利益を獲得する方法です。
この「安く買って高く売る」という手法は、バリュー投資と呼ばれ、その手法を確立したグレアムは「バリュー投資の父」とも称されています。
慎重な分析にもとづいて元本の安全性を確保しながら利益を確保する行為を「投資」、それ以外を「投機」
出典:マンガでわかるベンジャミン・グレアムの投資術(p.21)
事前にしっかりと定量的な分析をしない投資(=投機)については、「手を出してはいけない」とはっきりと述べられており、これから投資をしてみたい人にとって、ものすごく重要なポイントだと思います。
また本書では、財務状況を見極めるための貸借対照表の読み方が分かりやすくまとめられているので、投資に興味がある人だけでなく、ビジネスパーソン全員にとっても大切な知識を得ることができるでしょう。
企業投資家と個人投資家の目指すべきものの違い
グレアムの代表的な著書の1つ、1949年『懸命なる投資家』は、多くの投資家に影響を与えた名著です。
本書のなかでも、この『懸命なる投資家』を制作するにあたってのエピソードが掲載されているのですが、個人的に印象深かったのが、「個人投資家は『防衛的投資家』を目指すべきだ」という主張です。
個人投資家は動かせる資金に限界があるので、失敗や損失の回避を優先すべき、という内容は非常に納得感がありました。
この『防衛的投資家』が確認すべき7つの基準は以下のとおりです。
①適切な事業規模
②健全な財務状況
③収益の安定性
④配当歴
⑤収益の伸び
⑥妥当なPER(株価収益率)
⑦妥当なPBR(株価純資産倍率)出典:マンガでわかるベンジャミン・グレアムの投資術(p.128)
それぞれの基準の詳細は、ぜひ本書で確認してみてください。
現代向けに調整する必要あり
グレアムの活躍した時代は、インターネットのような情報収集手段が無いのはもちろん、上場企業の多くが、投資家に財政状況をすべて開示するのを嫌っていた時代で、だからこそ財務諸表などの定量的なデータを読み解くことが重要でした。
一方、2024年現在では、情報収集は格段に簡単になり、かつSNSなどの普及により、ブランド力(=数字に現れない無形資産)の重要性が高まってきているので、グレアムの時代とまったく同じアプローチは難しくなってきています。
グレアムに師事し、世界三大投資家と称されるウォーレン・バフェットは、グレアムの定量分析に限界を感じ、数字に現れない要素についても読み解く定性分析を取り入れています。
また、本書の監修のかぶ1000さんも、グレアムの提唱する様々は銘柄判断基準について、一部の数字の緩和やプラスアルファの分析要素を紹介してくださっています。
大切なのは、本書を含む様々な書籍などから得た知識をもとに、自分の納得できる基準を作っていくことだと思います。
過去の英知を自分のものにする
ベンジャミン・グレアムは医療系から古典文学まで、分野を問わず幅広い偉人たちから学び、そして自身の知識と経験を積極的に後進へと伝えていくことで、投資の世界に実践的な「学習」を持ち込みました。
「歴史上の偉人たちが身につけていた克己心(こっきしん)や規律といったものを「学習」しなければならない」
出典:マンガでわかるベンジャミン・グレアムの投資術(p.101)
本書の内容をそのまま導入するのは難しいかもしれませんが、その英知を「学習」し、自分のものとして活用することはできるはずです。
「投資をしてみたい」という人にとっては、ベースの知識を得るために、とても役立つ本だと思います。